東京都の養子縁組(4)

この前の続きです。

「里親認定前研修」のシメは、施設見学…です

私達を含めた養子縁組を希望するチームはそれぞれの住所によって各地にある乳児院に見学に行くのです。

私達は、家から便利とは言いがたい、車で片道40分くらいかかる乳児院に決まりました。

乳児院は港区など都心に多いそうで、やや田舎の我が家の近くにはないのだそう。

もし養子を迎えるチャンスが来たら、私がA子さんのように日参しなくてはならないのか…と思うと様々な不安が頭をよぎる。

が、進むしかないのだ。私は不妊治療の時と同様、熱意に燃えていた。

 

さて、当日の午後、この日も暑かった…。乳児院に駐車場があるかわからず、近くのスーパーに車を停める。歩いて乳児院に行くと、門前で暑そうな表情の男性が待っていて、案内をしてくれた。ここには5組くらいの夫婦が来ていただろうか、薄暗い部屋に輪になって、乳児院のスタッフさんから院の紹介、子供達の生活、実情、の説明を受ける。

スタッフさんの話は、これまでの講師や児相の方々のとは違い、より子供に寄り添った熱意のあるものであり、ショックであり、心を打たれた。

乳児院側の言い分と行政とは大きな隔たりがあるように思う。

(うる覚えでザックリな説明です。間違いがあるかもしれません。)

この乳児院には0〜2歳までの子が30数人いるが、その多くは養子に出させる事はなく、3歳を迎え児童養護施設にシフトされる。え?なぜ? こんなに養子を望む夫婦が多いのに…。と思う人もいるだろう。それは実親が権利を手放さないからだ。諸外国では子供を育てられないと見なされた親は強制的に子供を取り上げられて養子縁組にだされてしまうのだそうだが、日本では「血縁」を一番に重んじ、育てられない実親に親としての権利があるのだそうだ。

実親としては、「いつの日か、この子を引き取って…」という気持ちがある。

しかし、日々の忙しさで面会に来る回数は減る一方。ひどい例では一年に一度しか会いに来ない親もいる。子供の世話は施設に任せきり。お金も世話もかからず子供はどんどん成長する。

そして、「再婚するのでやはり育てられない」といった頃には、「可愛い時期を通り越し、家庭の生活に移行が難しい年頃の施設育ちの児童になっている。子供は3歳までが一番可愛いし、まだ、家庭になじめる。私達はその可愛い時を親に見て貰いたい。」と、スタッフさんは必死に訴える。

家庭をしらない子供達は、そのまま成長し、普通は大学もいかず、18歳になると施設を出される事になるのだ。

これって、なんなんだろう? この部分の法改正を、誰も訴えていないのだろうか?子供は誰しもが平等に幸せになる権利があるって、講義でも言ってなかった? すごい格差なんだけど…。

言いようのない怒りを私も感じた。

最初に我々を案内してくれた男性は、「子供の将来のために、早めに手放してほしい」と実親側を説得をするが、難しいのだと言う。

この施設で現在マッチング中の子を含めて養子の候補になっているのは6名だそうだ。残りの子には、どんな将来があるのだろう?

お話を聞いた後、施設内を見学した。

私も通った幼稚園のような園内。子供達は見学者に慣れっこで、愛想良く振る舞う。

まだ産まれたばかりの赤ちゃんもいた。ジュン君を思い出さずにいられない。この子は誰に貰われるのだろうか?

 

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