(20)ジュン君自宅に帰る
【33日目】(入院1日目はこちら)
息子が亡くなったあと、私達は元の部屋で待たされた。
小一時間後、NICUに呼ばれると、
全ての管やテープが外され、肌着と帽子をかぶったジュン君が現れた。
こんな整った顔をしていたのか…。と驚く。
今まで顔の大部分にチューブを固定するテープが貼られていたから、どんな顔か解らなかったのだ。
夫婦で、ここは誰に似ているなどと、不思議と笑いが起こる。
この時、今考えれば、錯乱していたのだと思う。
亡くなった事の悲しさよりも、精一杯やれる事をやったという達成感、みんなが苦しみから解放されたという安心感の方が勝っていて妙にハイテンションだった。
心おきなく抱っこ出来て、私は人目もはばからず子守歌を歌ったり話しかけたりしていた。
お写真もたくさん撮ったね。後からお得意の画像加工でお口の周囲のテープの痕を消して顔の色もピンク色に修正したら、本当に可愛い赤ちゃんだった。この写真はお祖母ちゃん達にもあげて喜ばれたよ。
親に連絡を入れると、母と妹がすぐに向かってくれたようで9時頃にはやってきた。
地下の霊安室に移され、葬儀屋さんが手際よく祭壇を作ってくれる。
さっきまでミルクのにおいに包まれていたのに、お線香のにおいになっていた。
ダンナが事務的な事を手配してくれ、病院の赤ちゃん用ベッドからドライアイスの敷かれた白木の箱に息子が移された。
箱は一回り大きいものにしたので、後からおもちゃやお花をいっぱい入れられて良かったと思う。
その後、次々と看護師さん達がご焼香に来てくれた。
なんと、ジュン君の足形をとって、それに寄せ書きまでしてくれる。
素敵なプレゼントだ。ありがとうございます。
H先生と看護師さん数人は、病院から自家用車で出ていく時にも玄関で見送ってくれた。
こんな暖かい病院で過ごせて、私達親子はラッキーだったと思っている。
家に帰ると母がおでんを作って待っていてくれた。お花も準備されている。
火葬は翌日で、ジュン君の体は一晩だけ自宅で過ごした。